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10.記憶以前(2) 

西洋社会における”トランス”の諸相

・催眠(術)

「催眠術は、西洋文化が、トランスというグループの中に組み込もうとする現象の1つである。
催眠術をかけられた人は、トランス状態にあると言われる。」
「催眠術は、実験的調査が可能な、トランスの一形態のようである。」
「催眠術に特別にかかりやすい人というのもいるが、一般に、人に催眠術をかけるのは容易なことである。」


「一八九二年までには、ピエール・ジャネは過去の記憶を取り戻し、それを解決するという、一般的な催眠術療法を提案しつつあった。」
「当初、フロイトはシャルコーの足跡を追っていたが、その後催眠術を拒絶して、記憶に触れるための別の技術を開発した。精神分析は一貫してフロイトに忠実だったが、ラカンが支配的地位を占め、催眠術が最大のタブーだったころのフランスでは特にそうだった。」
「アメリカは、常に大衆運動が力を持ち、権威に対して冷淡な国であるが、(中略)しかし、心理学の研究を支援するために交付される研究費から、催眠術やトランス研究に当てられた金額は、驚くほど少ない。」


・日常とトランス

「西洋の先進工業国の社会では、余暇のための行動か、社会から疎外された行動以外には、トランスの存在する余地はない。」
「霊媒がいる。瞑想がある。祈りがあり、そして音楽が個人と集団の両方で使われ、他の文化の中で観察されたならば、トランスと呼ばれるかもしれない状態をつくり出している。」


「しかし、これらの行動が、製造業やサービス産業に入り込むことは許されない。」
「もしかしたら、昔の組み立てラインについていて解雇された労働者の中にはトランス状態になっていたものもいたかもしれない。(中略)これとは対照的に、ブリティッシュ・コロンビア沖合いのシャーロット初頭にすむハイダ族の織物職人たちは、同じ動作を繰り返す仕事の途中、定期的にトランス状態に入ったが、そうなったときに織り上げた布には、ある種神聖な性質が加わるため、トランスはむしろ珍重されていた。」


「現代のアメリカで、トランス状態が社会的に認められている場所は、家と職場を車で往復する通勤の場面である。」
「彼ら(環境運動家)はなぜ人々が車の相乗りや、公共交通機関を利用しないのかが理解できない。しかし、理由の一つは明らかだ。自分の好きな音楽やおしゃべりや自分で選べる番組によって、トランスに似た状態になることが非常によいものになり得るからだ。」


・ADD(注意欠陥障害)

「現代社会でトランスに似た状態の範囲をつかむためには、最近よく話題になる、子供のときに起こる注意欠陥障害(ADD)のことを考慮する必要がある。」
「《ニューヨーク・タイムズ・マガジン》の夏季キャンプ特集は、ADDの子供を専門に扱うキャンプの広告であふれている。皮肉屋は、問題を抱えた子供の存在自体は否定しないものの、かつては白昼夢を見ることを許されたり、寛容な娯楽によって取り扱われていた多くの子供が、今や冬にはセラピストのもとへ、そして夏にはキャンプへ送り込まれていると言う。」



トランスと多重人格と現代社会

「トランスは、多重人格に近い、潜在的な障害であると宣言されて来た。しかし、逆の説明も可能である。つまり、トランスに入る能力を使用もしくは濫用する方法こそ、多重人格だ、という説明である。」
「われわれは、トランスについてよく知らない上、トランスを病的なものにしたがる。」


「なぜわれわれは、トランスを社会から疎外するのか?」
「産業機構というものが決定的に重要になったからだけではない。昔はそれほど厳格なものではなかったにせよ、トランスに似た行動が除外されるようになったのは、産業化より早い時期のことである。」
「ただし、西欧とアメリカの社会は、おおむねメアリー・ダグラスが企業文化と呼んだものの実例となっている。それらを特徴づけているのは、個人の責任が極度に高いレベルにあるとともに、それに応じて個人の可能性も大きいという点である。」



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