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哲学者の見る多重人格 

記憶を書きかえる―多重人格と心のメカニズム 記憶を書きかえる―多重人格と心のメカニズム
イアン ハッキング (1998/04)
早川書房

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お久しぶり多重人格ノート更新。
イアン・ハッキング『記憶を書きかえる:多重人格と心のメカニズム』の”16.心と身体”より。
(1)古典編(2)現代編1(3)現代編2,3部構成まとめてのアップです。
・・・・実際は前2部は7月中にアップ済みだったんですが、告知してなかったので見た人は少ないでしょう。今回改めて。

「哲学者」というと何やら遠い存在のようですが、「心理学/精神医学的専門性」という観点からすれば、むしろ我々一般人の代表という立ち位置ではないかと。・・・・つまりは”門外漢による、直接は治療を目的としない比喩的興味本位的思索”という意味で。僕のこの作業自体も正にそういう面が強いわけですが。
(1)古典編では「多重人格」という衆目を驚かす現象との遭遇と受容の試みが、(2)(3)現代編ではそれを踏まえて「自己」や「個人」という日々我々が興味を持っている概念の、異なる立場による改革・捉え直しの試みが展開されていると、そんなところでしょうか。

特に問題となるのは(2)と(3)、多重人格という”衝撃”を受けて「個人とは(要するに)多くの構成部分からなる存在だ」と多重性・相対性の認識の徹底に至るデネットと、いや、それらの背後に更に「あらゆる自己の中心となる核が存在する」のだと粘り腰(笑)を見せるブロードの対立でしょう。

僕自身はどちらの言うことも分かるように思いますが、『多重人格』という実例のみを材料とする限りでは、デネットの方により大きな妥当性を感じます。
というかデネットのような認識というのは要するに多重人格という現代的な現象、事例群から導き出されるごくごく一般的論理的な帰結を代表するものであって、「強いて完全な統合は目指さない」という近年の治療の現場の趨勢などにもそれは現れていると思います。

またブロードが指摘した交代人格間における技能的な”基質”というようなものは、恐らくは記憶や学習の(長期/短期などの)多重構造や階層性という、より広く認められた概念・理論で当面容易に説明されてしまうものだと思います。
更に僕自身の関心から言えば、ブロードが見出したものは「自己や個人の根底」というよりは、むしろ「人間/ヒト全般の共通層」と言うべきものなのではないかと。結論が先行し過ぎて例の選択を失敗してるよオジさんというそんな感じです。

つまりまあ、一種の超時代的な主張という性格が強いんだと思いますね、ブロードのは。”カントの後継者だ”とは著者ハッキングの言ですが。必ずしも多重人格という実例に密着したものではない。究極的には正しいかも知れないけれど、当面は何とも言えない。
それに対してデネットのは正に多重人格という現象に触発されて導かれたもので、そういう意味での堅実さ、説得性がある。それだけとも言えますが。単なる現象論。


他の部分について言うと、デネットやホワイトヘッドが提示している”大統領””国家”という比喩は、実は10年だか15年だか前に初めて多重人格という現象の存在を聞いた時に、僕自身が咄嗟に思い浮かべた比喩でもあったりします。・・・・勿論僕は日本人なので、実際には”総理大臣”の方でしたが(笑)。国家、複合的な権力機構としての自分。

だから僕は大哲学者ホワイトヘッド並の知性を持っている、なんてことは言いませんが(笑)、要するに自己の本来的多重性や相対性といったことについての哲学的思考をめぐらしているタイプの人にとって、あるいはそうした予感を胸に生きていた人にとって、多重人格という現象は実に華々しくかつ痒いところに手が届く魅力的な比喩、現実からの贈り物であったわけですね。
正に「精神分析」「無意識(の発見)」以来の文化的影響力を持った便利ツール、心理学上の概念だと思います。(迫るものとしては「自己同一性」とか「自己実現」とか。嫌いですけど。)

・・・・本編は実際は内容的にほぼ倍の分量があるのですが、あまりに”多重人格論”から離れて高級過ぎる、哲学史的背景を要求し過ぎるきらいがあるので思い切って割愛しました。むしろ著者が本当に言いたいことはそっちにあるようですが。
ちなみに『心と身体』という章のタイトルの意味は、その全編を読んでもさっぱり僕には分かりませんでした。色々と言いたいことはあったけど詰め込み過ぎてよく分からなくなっている章なんだろうなという感じ。

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