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郭靖と楊康の”合わせ鏡”と『射英雄伝』(2) 

射雕英雄伝〈3〉桃花島の決闘 射雕英雄伝〈3〉桃花島の決闘
岡崎 由美、金庸 他 (1999/09)
徳間書店

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(1)より。

”合わせ鏡”としての郭靖と楊康

いわゆる南宋の金に対する「靖康の恥」に由来するネーミングからも明らかなように、郭靖楊康というのは最初からセットで構想されたキャラだと思います。単によくあるライバルではなくて、”人間の二つの面を表わす”象徴的なキャラとして。素朴と洗練。田舎と都会。賤と貴。無欲と名利。などなど。

二人の基本性格は互いへのコントラスト(それもかなり類型的な)で定義されているので、そういう意味では不自然というか不自由というか、独立性がないというか。そのままでは血が通わないというか。
それでも楊康は言わば人間の「本音」の部分を担っていたので、全く評判は悪かったけれど(笑)それなりには”血”は通っていたと思います。誰だって一国の王子の座を捨てるのは嫌に決まっている。しかし「建て前」を担わされた郭靖は・・・・。

子供の時はそうでもなかったと思うんですけどね。愚鈍は愚鈍なりにキャラは立っていたし、コジンを助けた時の剛直な行動力みたいなのも、プロフィールとして上手く出来ていたと思います。ただ中原に出て来てから(楊康に会ってから?)は、終始欲求や行動原理の見え難い、取ってつけたようなただの善人みたいになっちゃって。

『ドラゴンボール』で言えば子供の時はちびの怖い者知らずの孫悟空だったのが、大人になったらカカロット・・・・にはならずに、なぜか優等生の孫悟”飯”の方になっちゃったみたいな。しかも頭の悪い(笑)。そして楊康もベジータにはなれなかったと、それは次の話。


変化・成長出来なかった郭靖と楊康

あるいは最初の”合わせ鏡”プランから抜け出せなかった、動かし切れなかった金庸先生。

唐突ですが僕は『ドラゴンボール』の悟空とベジータの関係が大好きなんですね。純朴主人公とヒネ者ライバルとの定型構図としては、最高度に成功したものだと思います。
何よりあのダイナミズム、特にベジータの変化の仕方と、基本性格は変わらないまま最終的に獲得する屈折した「人間味」

ベジータ

は、ほとんど涙モノだと思います。

注意すべきはこれはさして計画的なものではなくて、つまり”ベジータ”というキャラは最初からいたわけではなく、ヤムチャ→天津飯→(新)ピッコロと続く”厭味な仇役”の「指定席」に、言わばたまたま順番が巡ってきて坐っただけの1キャラだということです。
その後も「指定席」そのものはストーリーの都合上誰かが常に座り、それぞれにキャラは立っていましたが、ある意味2代目主人公孫悟飯を押しのけるほどの大きな存在感を獲得するまでに育ったのはベジータだけなわけです。

勿論その背景には(主人公と同じ)”サイヤ人”という特権的な要素などがあるわけですが、とにかく初期プランにこだわらずにベジータが生まれ育つことを許されたゆえの、悟空との素晴らしきライバル関係だったわけです。

ここらへんは日本式の連載漫画のスタイルに負うところが大きいので直接の比較は難しいですが、それにしても郭靖と楊康の関係はショボいよなと、思わざるを得ません。
「最終的に楊康は改心しない」というコンセプト自体は、殺伐とはしてますがそれはそれでリアリスティックで悪くないと思います。ただそれにしてももう少しカラめて交わらせて、それぞれに動いて変化がないと、「あるところに浮き世離れしたいい人がいました。またあるところに小心翼々とした俗人がいました。いい人は頑張りました。俗人は落ちぶれて死にしました。」というだけの話じゃないかという感じすらします(笑)。結局”親の代の因縁”以外、何の関わりもないじゃないかこの二人は。

ある意味一番哀れを催すのは、楊康では”悪”すらも足りなくて、同系の欧陽克を新たに出さざるを得なかったように見えてしまうところです。何の為に出て来たんでしょう、楊康って。
引きで見れば一応コントラストにはなってますけど、まあ何というか計画倒れなところの多い”合わせ鏡”だなとそんな風に思います。それなら郭靖を単独で、楊康のテリトリーを犯すことを気にせず、もっと自由に描いてあげれば魂も入ったろうにと。自分で設定したルールに自分で縛られてしまったのかなとか。

当初の構想から、執筆開始時点では既に形だけ残った設定と割り切ってたりしたのかなとも、少し思いますが。泣くな楊康、リベンジは息子がちゃんとしてくれたから。(笑)


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