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浄瑠璃坂の仇討ち/高橋義夫 

浄瑠璃坂の仇討ち 浄瑠璃坂の仇討ち
高橋 義夫 (1998/07)
文藝春秋

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相変わらずこつこつ読んでます・・・・あ、前回と同じ書き出しだ。
実に何というか「こつこつ」読むのが似合う人で(笑)。
年齢(’45年生まれ)の割りに妙に軽やかだ、風通しがいいということを最初に書きましたが、その後色々読む中でだいたい正体が見えて来たような気がします。
要するに学者肌なところがあるんですね。相当に理知的というか。その学者的な論理性や問題意識自体の持つ普遍性が、年齢の壁を越えさせている。1+1が2であることに年齢は関係無いというわけで。

かといって別に京極みたいに難しいことが書いてあるわけでは全然無いです。至って普通の時代小説といえばそう。義理も人情も丁寧に過不足無く描かれている。
ただまあ、生臭い感情や大げさなクライマックスに対する忌避感・苦手意識みたいなものはあると思います。そこらへんが学者っぽいというのと、僕の肌に合うというのと。

読んでいる時は知らなかったんですが、後に赤穂浪士たちも参考にしたという実在の仇討ち事件を元にしたこの作品も、終始淡々としているところや妙に剣術のディテールが細かいところなど、正に高橋義夫さんらしい作品。ただよく読むと微妙に大作仕様というか、事件の裾野をきっちり広げて縦糸横糸を丁寧に張り巡らし、山あり谷あり展開の起伏にも工夫の跡が見られ、結構リキ入ってるなあなんか新境地にでも挑戦してるんだろうかというそういう印象もあります。いや、別に長くはないんですけど。

にもかかわらずまたはそれゆえに驚かされるのが話のクライマックス及び結末の静かさで、仇討ち自体は史実通りに決行されるのですがその中で当然ハイライトとして登場するだろうと誰もが予想する、ネタバレになるので詳しくは書きませんが恐らくは大部分が作者の創作だろう複数の因縁・宿命の対決が、いずれも華々しい悲劇として行き付くところまでは行かずにニアミス程度で微妙なところで回避されて収束するんですね。十分に作風に慣れていた僕でもかなり意表を衝かれました。

ググっても大した書評が出て来なかったので分からないんですが、これ一般の読者にはどう受け止められるんでしょう。物足りないと思われるんでしょうかやっぱり。僕は際どいところで上手く成立している、なかなか見事な手腕だなと思いましたが。

最初の「剣仙伝奇」でも『主人公の積年の恨みが遍歴の果てに浄化していく描写が好き』と僕は書いてますが、こういうアンチ・クライマックスというかストレートな恩讐の激突の回避というのは、かなりの程度この人の性分でもあるし、問題意識のありかでもあるんだろうと思います。
問題意識というのはつまり、少し文脈は違いますが例えば僕が「遠すぎた橋」について書いた”悲壮美の回避”みたいなことですけど。みんな少し落ち着けよと、ムキになってもいいことないよ。さぞかし気持ちはいいだろうけど、そう簡単にエスカレートする激情に身を委ねてしまうのはどうだろうと。・・・・こう言葉にしてしまうと馬鹿みたいですが(笑)。

少なくともフィクションを創って提供する立場の人間として、盛り上がりを自己増殖的に目的化するのはイカンと、本当の「解決」とは何かもう少し考えてみようと、そういう問題意識は持っているのだと思います。受け取る人によってはただのきれいごと、学者もどきのたわ言でしかないのかもしれませんが。
いやあ、良かったなあと思いましたけどね僕は。みんな悪い奴じゃないんだから喧嘩はやめようよ。人死にが出りゃあいいってもんじゃないよと。甘いですかね(笑)。

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コメント

まあどのみち言い分に価値が出て来るのは、フィクションとしての出来映え次第ですね。
普通は悲劇性やドラマ性に頼らないと収まりがつかないわけです。

管理人さんは歴史小説も読むのですね。
>みんな悪い奴じゃないんだから喧嘩はやめようよ。人死にが出りゃあいいってもんじゃないよと。
には激しく同意。
この本読んだことないですけど、最近古代史をテーマにした小説もほぼ食い荒らし?、戦国や幕末をテーマにした小説を読んでるんですけど、切なくなりますね…。どっちが負けるか知ってるから。特に上・中・下巻もある大作を読んですっかりその主人公に感情移入したあげく、避けられない戦いにおよんで悲惨な最期なぞになってしまうと(例 「峠」by司馬遼太郎)、読んだあとかなり鬱入ります…。

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