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総評 ?(共)著者ラルフ・アリソンについて 

「私」が、私でない人たち―「多重人格」専門医の診察室から 「私」が、私でない人たち―「多重人格」専門医の診察室から
ラルフ・ブリュースター アリソン、テッド シュワルツ 他 (1997/08)
作品社

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先駆者にして異端者。多重人格界のユング?

アメリカの精神科医として最も早い時期から「多重人格」という独立した精神障害の存在を認め、治療に関わった一人。そして多くの多重人格者の内部に存在する、セラピストに協力して治療を助ける守護者的人格”Inner Self Helper”(以下ISH)概念を定式化し、後の多重人格治療の大きな指針・共通言語を提供する。

一方でその自らが見出したISH人格たちとの見ようによっては”教祖と司祭”的な緊密な結び付きや、人格たちが語る心的世界に関する宗教的とも言えるイメージへの屈託の無い信頼の表現から、その治療実績には十分な敬意を払われつつもある種”イッてしまった人”として異端視されている部分もあるよう。治療上必要と認めればエクソシズム(悪魔祓い)の真似事なども恐れず実行し、活動の初期においてはそれが元で深刻な職業上の危機に見舞われかけたことが本書にも書かれている。

ある時期国際学会の主導などもしたが、その後巻き起こったアメリカにおけるブームとも言える多重人格”運動”の勃興やそれに対抗するように出て来た「虚偽記憶症候群」一派の反・多重人格運動、また精神医学界内部における「多重人格」から「解離性同一性障害」への公式診断名の変更をめぐる論争などからは距離をとり、そういう意味でも現在は孤立した存在になっているらしい。(ちなみに僕がネット上で少し議論した日本人の若い精神科医は、この本を読んでいなかった。)


あれやこれや印象としてはあくまでセラピスト、職人気質の現場の人で、”ISH”という重要な理論的貢献をしてはいても理論家・学者としての性格、エゴはほとんど持っていない。そのため決して「難解な」タイプの文章ではないのだが、たまに余りにも物言いがストレートで果たしてそのままの意味で受け取っていいものか悩んだり、また体系的整理の効率からするといかにも無雑作に概念が作っては放り出されている為に相互の関係が見えずに理解に困難を覚えることがある。ちょっと思い出したのはユングの文章だったりするのだが。

上でも述べたようにユング同様アリソンも時に神秘主義者的な扱いを受けることがあるが、後日取り上げるイアン・ハッキングの学史的良著「多重人格と心のメカニズム」によると実際アリソン本人が神智学(ロシアのブラヴァツキー夫人が創始した近代ヨーロッパの代表的な神秘主義運動。キリスト教を軸としつつも古今東西のほとんどあらゆる神秘・宗教思想を一つの流れの中に融和的に位置付けようとした。)への理論的依拠を明言していたそうだから、無罪とはとても言えないかもしれない。

ただそうした”裏事情”はとりあえず置いて虚心にこの本を読めば、浮かび上がって来るのは患者の苦痛を取り去る為には自分の学者的こだわりや職業的エゴをいとも簡単に棚上げ出来る誠実でフットワークの軽い信頼出来るセラピストの姿であり、またひいては患者やその障害に代表される自分の外からやって来る「経験」や「世界」に対して極度にオープンなある意味非常にタフで尊敬に足る人物の姿である。別の言い方をすると彼は瑣末な理論知の干渉の到底及ばない豊かで深い感情を伴う経験・直観を味わって「しまう」タイプの人であり、それがアリソンの学説を通常の学者的配慮を大きく逸脱したものに否応無くしてしまう。

だから結局アリソンの「理論」というのはアリソンその人なのであり、基本的には彼を尊敬し彼を引き継ごうとした多くの後継者たちが、次第に彼の概念を意識的無意識的に脱色・中性化してやがては距離を取るようになるのは無理のないことなのかもしれない。本当にアリソン理論を使えるのはラルフ・アリソンただ一人なのだ。
ここらへんは例えば「元型」や「集合的無意識」についてユング本人が書いたものと、後の”ユング派”と称する人たちの文章とを読み比べる時の僕の違和感と再び重なる。あれ?こんな薄い話だったかな。俺の知ってるのとなんか違う。

・・・・まあユングほどの天才でも気○いでもないとは思いますが。アメリカのそっち系の人らしく、単に悪ノリ、脳天気と感じることもままあります。そういう人の本です。


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