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『書剣恩仇録』各論(1) 

(総論)より。


書剣恩仇録〈2〉乾隆帝の秘密 書剣恩仇録〈2〉乾隆帝の秘密
金 庸 (1996/11)
徳間書店

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『書剣恩仇録』に関する悪評(笑)

当時大評判を呼んだらしい記念すべきデビュー作ですが、その後東アジア中に広がった金庸読みの間では、相対的にかなり評判の悪い部類の作品として落ち着いてしまっています。かく言う僕も初見の印象はうーんという感じでした。


1.主人公陳家洛の不人気

成長の過程、過去のことは書きませんでしたからね。成長してからの、最後の数年間の話です。



この人はね、中国の伝統的な知識分子です。大きな官僚の家庭で育てられた。(中略)彼自身は英雄好漢ではなく、伝統的な中国の読書人なんです。


どちらも『きわめつき武侠小説指南』における金庸自身の言葉ですが、ここにあるように

・作中でドラマチックな変容・成長を遂げてくれないので感情移入がし難い。
・のぺっとしたエリートで、建て前主義過ぎて人間味が足りない。

という苦情が陳家洛についてはよく聞かれます。


2.構成の慌ただしさ、ぎこちなさ

上の1番目の引用はこう続きます。

岡崎 どうしてですか。やはり処女作だったから・・・・?
金庸 じっくり引き延ばして書く時間がなかったからね。だから、ストーリーの展開が速すぎる。

(『きわめつき武侠小説指南』p.66)


僕自身、先に「難点」の(2)として書いたことですね。


3.”滅満興漢”の「お国のため」テーマの空々しさ

これも(3)として書いたこと。

特に誰もが愛してやまない悲劇のヒロイン”香香公主”カスリーをその為に見捨てた恨みが中心となっているわけですが、また1.の”陳家洛のパーソナリティ”の問題とも不可分の関係があります。それを強調したがゆえに、ああいう建て前主義的な性格になったという。


以上基本的には同感なわけですが、1,2については必ずしも一方的に欠点と言い立てるのには疑問というか同情的な部分があるので、(その3)以降でこれから反論・弁護を試みてみます。

3についてはまあその通りですね(笑)。ただ

・そもそもが「(清の)乾隆帝出自伝説」「香妃伝説」といった、中国で巷間よく知られたエピソードを重要なモチーフとした比較的公共性の高いストーリーであり、ある意味本質的には”仕様”だとも言える。
・そしてそうした歴史性/公共性を積極的に導入するというのは金庸の武侠小説の重要な特徴であり画期性であるが、ただこのデビュー作ではそれの文学性・抒情性との匙加減が今一つうまく行っていない。

という事情は鑑みる必要があることを付記しておきます。

では続いてイクスキューズのパートへ。

(2)につづく)


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